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川口博之(助教授) 分子研リポート2001 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究系及び研究施設の現状 173

川 口 博 之(助教授)

A -1)専門領域:錯体化学

A -2)研究課題:

a) シリルカルコゲノラート錯体を前駆体としたカルコゲニド化合物の合成 b)金属錯体による小分子活性化

c) 多核金属錯体の合成と反応性に関する研究

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) シリルカルコゲノラート錯体を前駆体としたカルコゲニド化合物の合成:ケイ素−硫黄結合をもつシリルチオーラ ト配位子をもつ遷移金属錯体の合成を行った。前年度の研究では,フェニル基をケイ素上にもつシリルチオーラト 錯体の合成したが,フェニル基の電子的および立体的効果によりケイ素−硫黄結合が安定化しており,期待した反 応性は見られなかった。本年はケイ素上の置換基としてアルキル基のみをもつシリルチオーラト錯体の合成を行い, 得られたアルキル置換シリルチオーラト錯体はフェニル基をケイ素上にもつシリルチオーラト錯体よりも高い反 応性を示し,温和な条件下でケイ素−硫黄結合の切断がおきることを見い出した。

b)金属錯体による小分子活性化:反応過程での配位子の不均化の防止,配位不飽和種の創出および分子認識能の付与 を目指し,新規配位子としてメチレン鎖架橋のフェノール3量体(L)を設計・合成し,錯体合成を行った。その結果, 配位子Lは多様な酸化状態の金属中心を安定化できることを明らかにした。また,配位子Lをもつニオブ錯体とヒド

リド試薬を窒素雰囲気下で反応させると,室温,常圧で窒素−窒素3重結合の切断が起こり,ニトリド錯体が生成す ることを見い出した。これは従来に無いタイプの窒素固定反応であり,温和な条件下での金属錯体を用いた窒素固 定反応への展開が期待できる。

c) 多核金属錯体の合成と反応性に関する研究:多核金属錯体を構築する新しい配位子としてビス(アミジナート)配位 子および多座フェノキシド配位子とそれらの金属錯体を合成した。前者に関してはtrans-ジアミノシクロヘキサン から誘導したビス(アミジナート)配位子を用いたときに2種類の異性体の生成が考えられるが,配位子の自己認識 により,1つの異性体のみが選択的に生成することを見い出した。一方,多座フェノキシド配位子としてはフェニレ ン基をスペーサーとして用いた多座配位子を設計・合成し,チタン(IV )錯体の合成を行った。その結果,2核,5核,6 核錯体を得ることに成功した。

B -1) 学術論文

H. KAWAGUCHI and K. TATSUMI, “Synthesis of a Cp* Complex of Tungsten with Three Different Chalcogenido (O2-, S2-, and Se2-) Ligands,” Angew. Chem., Int. Ed. 40, 1266 (2001).

Y. SUNADA, Y. HAYASHI, H. KAWAGUCHI and K. TATSUMI,“ Alkynethiolato and Alkyneselenolato Ruthenium Half- Sandwich Complexes: Synthesis, Structures, and Reactions with (η5-C5H5)2Zr,” Inorg. Chem. 40, 7072 (2001).

(2)

174 研究系及び研究施設の現状 B -6) 学会および社会的活動

学協会役員、委員

日本化学会東海支部代議委員(2001- ).

C ) 研究活動の課題と展望

我々のグループではA -2に挙げた3つの課題を中心に研究を進めている。課題a)では金属カルコゲニドクラスター化合物の 新規合成法の開発を目指し,その原料化合物となるシリルカルコゲノラート錯体の合成を行っている。今後は反応活性なケ イ素−カルコゲン結合を利用することにより,設計どおりの組成や構造を有するクラスター骨格を構築する合理的な合成法 の開発へと繋げたい。課題b),c)では多核金属錯体を合成し,クラスター上での分子変換反応の開拓を行っていきたい。特 に,小分子(窒素,二酸化炭素,一酸化炭素等)の活性化を目指し研究を進める。

参照

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